メールアドレス(半角):


バックナンバーは こちらから
株式会社リッテルが発行する
無料メルマガです。







東大産学連携企業株式会社リッテル

第36回マイニング探検会(京都)を開催しました

第36回マイニング探検会

http://www.facebook.com/events/358913574228522/


====================

日時 6月8日(土)16:00-18:00

場所:京都 鍵屋荘


スケジュール:

  1. 16:00-16:30: リバタリアン・パターナリズムについて(清田)
  2. 16:30-17:00
  3. 17:00-17:30
  4. 17:30-17:50 
  5. 17:50-18:00 次回の予定など


係分担:

  • 記録係:林
  • 中継係:嶋田
  • 懇親会係:是住
  • タイマー係:東


参加者:11名

====================


Togetter:http://togetter.com/li/515478

Ustream:http://www.ustream.tv/channel/mitan36




1. 岡本さん:マイタン趣旨説明(1600-)




2. 清田さん:リバタリアン・パターナリズム(1610-)

※ほぼスライドのままです


前回東京での話題

   * 情報探しでの不安と安心を決めるものはなんだろうか?

   * 本当の意味で不安を解消するにはあえて葛藤を経ることを必要では?

   * 行動経済学の知見=二重プロセルモデル

      * c.f. ダニエル・カールマン(ノーベル賞受賞者)

      * 人の思考はふたつに分かれている

         * システム1=速い思考(直感)

         * システム2=遅い思考(推論)

   * システム1とシステム2のかかわり

      * まずシステム1による直感.努力を最小化,成果を最大化.たいていの場合はうまくいくがそうでないことも

      * システム1では解けない課題にはシステム2による「理性的思考」を

   * レファレンスの果たせる役割は?

      * システム1で探す情報を決めてしまいがちな場合にシステム2で検討する必要性を喚起する

      * システム2が疲れてるときにいったん休憩してもらうことも一つの方法?

   * 主な議論

      * システム2が疲れてるときにサービス提供者側としては何ができる?

         * 日を置いてもらったほうがよいこともあるかも

         * 利用者がすぐに答えを求めたがるかもしれないが,ブレーキをかける役割も必要?

      * 利用者の声を聞いてもわからないこと

         * ウェブと同様,行動に着目して分析する必要

         * 書架の利用実態をどうやって知るか

      * ディスカバリーサービスの課題

         * ヒットする情報が多すぎることがかえって利用者の不安を増やしている?

            * 情報の量だけ増やしても意味がない

            * 多様な情報源を有機的につなげる必要がある

      * ゼロヒット問題

         * 解消しなくても

         * ゼロヒット=探し尽くした結果,という納得があればいいのでは


サービス提供者側にとっての2つの立場

   * 利用者の意思の尊重に重きを置く立場

      * 自由を妨げてはならない

      * 要求されないかぎり口を出さない

   * 専門家としての支援に重きを置く立場

      * 利用者との間に知識格差があるのでアドバイスすることが有益

      * 機会がある限り口を出す


リバタリアニズムとパターナリズム

   * リバタリアニズム(完全自由主義)

      * 他人の権利を侵害しない限り,各個人の自由を最大限尊重すべきと考える立場

      * ≠リベラリズム(e.g. アファーマティブ・アクションへの意見の相違)

   * パターナリズム(父権主義)

      * 弱い立場の者の利益を保護するために強い立場の者が介入することを許容する立場

      * ex 医者と患者


パターナリズムが批判される理由

   * 当事者にとっての「最善」が何かを強い立場の者が判断できるとは限らない

   * 自己決定権の侵害になりかねない

   * c.f. 貸出履歴を活用したレコメンデーション


Richard H. Thaler and Cass R. Sunstein. Libertarian Paternalism. 1993. http://bit.ly/18e0KYW

   * 現実世界ではパターナリズムを完全に避けることはできない

   * だったらパターナリズムの考え方もうまく取り入れるためのデザインを考えた方が建設的じゃない?

   * 要は「デフォルトの設定」をどう活用するか

   * 利用者にとっての利益を最大化するためにはどういうオプションをデフォルトにすればいいか


パターナリズムはなぜ避けられないか

   * カフェテリアコーナーの設計の例

      * メニューの配置の順番は利用者の選択に影響を与えてしまう

      * そもそも配置の順番には恣意性が絡む

         * デザートの手前にフルーツを置くとか

   * 401kプランへの勧誘の例

      * オプトインにするかオプトアウトにするか


リバタリアンの要求を満たすパターナリズムの実装


   * 利用者にとっての利益を最大化するオプションをデフォルトにしておく

   * ただし,利用者の自由意思でデフォルトオプションを拒否することができることが明示されている


利用者にとっての「利益」が自明でないときは?

   * 利益を間接的に表現する代替手段を使う

      * 1. 多数が選択するオプションをデフォルトに(市場的アプローチ)

         * 多数による選択が informed の状況でない場合が問題

      * 2. 明示的に選択することを強制

         * 利用者の熟慮を引き出せるかどうか

      * 3. オプトアウトの数を最小化

         * オプトインにしても401kの加入者が


「真の自由」を実現するには?

   * カント哲学からのリバタリアニズム批判

      * 「自律的な判断」でない限りは,真に自由が尊重されているとはいえない

      * 直感のみで判断している状態は他律的ではないか?

   * 信頼関係が成り立っている上での「デフォルトの設定」なしには,真の自由は実現しない?

      * 理性的な判断には多大なリソースが必要

   * リソースは有限




3. 討論(1640-)※自己紹介込み


・ディスカバリーサービスはたしかにヒットしすぎるが,利用者の背後にある情報を使って順位付けを行うのが大切.また,ゼロだから検索しつくしたということはないんだろうと.特許検索でもあるように,ゼロの証明ほど難しいことはない.リバタリアニズムとパターナリズムについては,レファレンスライブラリアンはその人のレベルにあったことを提供しないといけないと思う.

→もちろん多くの場合はゼロヒットは避けるべきだろう.東大・影浦先生が言っているがなければ諦める(★★★この部分ちゃんと聞き取れなかったので誰か補足していただけると助かります).

→ゼロヒットについて.アメリカの研究で,図書館システムへ利用者が回帰しはじめるという結果が出たものが.自分の図書館で手に入らないものまで見せてほしくないということ.ホームズで家探しをした経験から,ゼロならゼロと言ってほしいと思うことも.ほんとはゼロヒットであるといってほしいひとに対して,図書館がゼロヒットの提示を避けてしまっていないか.


・父権主義になっちゃだめですか?

→完全にはパターナリズムを避けられない.館種や利用者の状況によっても違ってくる.


・自大学図書館のトップページをディスカバリーサービスにしたら,こんなにヒットするものは要らないという声があった.議論の末,OPACをいちばん上に置き,その下にディスカバリーを置いた.大学にとっては学生がいちばん大事.


・リベラルが図書館に近いのでは?

 →図書館の自由宣言はリベラルだと思う.


・ディスカバリーを上にして,それじゃだめなひとはOPACを探して使ってくれればいいと思う.デフォルトのところはそういう自律的な判断ができない人向けのものを.ただそうした場合,自律的な判断をできないひとが,そのうち判断ができるようになっていくのだろうか.


・GoogleのランキングはGoogleによるパターナリズムそのもの.


・公共図書館ではリテラシーの低いひとのほうに合わせざるを得ない.いちばんいいところにはOPACとか簡単なものを置き,ゼロヒットだったときに,より高度な検索ができるようにしかけを.

→公共図書館の場合はOPACが上のほうがいいような

→公共図書館の場合はまず自分の図書館を使ってほしいというのがある

→公共図書館でもebookを契約しているのであればそれも検索できるようにすべき


・利用者の期待というのと絡めるとどうなるか?

→相互貸借について,利用者のなかにはそこまでやってもらわなくてもいいやというひともいる.

→そこで利用者が諦める理由は2つあると思う.ひとつは取り寄せるよりも良い手段があるんじゃないか(本屋に走るとか)というもの.もうひとつはほんとうにもういいやと諦めるというもの.


・公共図書館で913.6を探しているひとにディスカバリーをすすめても

 →OPACなんか見ないで棚を見たり職員に聞くひとも結構多い.


・自大学では1990年代に電算化されて以来の検索ログが保存されてる

→東大の検索ログは入手できなかった

→国立は難しい.私立なら.オープンデータの時代に乗せて「◯◯大学チャレンジ」とか.


・大学の授業で図書館システムを構想するというものがあった.自大学のログは使えなかったので別の大学(教員の前任校)のログを使って分析した.

→大学図書館の場合は,課題で仕方なく本を読んでいるだけなので,ログから思想が分かるというわけではないというのが持論.

→個人を特定したいわけじゃない.学科や,これとこれは同じ人だったということは分かるといい.

→2段階方式がおすすめ.IDを暗号化する,独占的な共同研究契約を結ぶ.

→エンロンeメールデータセットのおかげでテキストマイニングや人間関係ネットワークの研究がすごい進んだ.




4. その他の話題(1720-)


・合宿の開催時期・場所


・ICタグについて

-UHFとHFのどちらがいいのか

-利用者カードとICタグ付き蔵書を持ってゲートを通るだけで貸出手続きがなされると便利


・ラーニングコモンズについて

-ラーコモのような場所が学内各所にできた結果,図書館のラーコモの利用者が減ってきている.空間を作れば良いという段階は終わり,次に図書館にラーコモを作るとしたら図書館ならではのものが必要

-その大学にあわせた学習支援がなされているかという疑問がある.流通科学大学ではローソンが入っていてそこで実習ができるようになっている.都心部の大学だと,大学のなかに雛を育てるような場所を作っていいのだろうか.大人と触れ合い,いっしょに仕事をすると学生の成長が違う.