第20回マイニング探検会を開催しました
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日時:2012年1月20日(金)19:00-21:00
場所:千代田区立日比谷図書文化館 4階 スタジオ+(小ホール)
http://hibiyal.jp/hibiya/access.html
スケジュール:
19:00-19:30 清田先生講義
19:30-20:50 今年の抱負・自由テーマ・チーム発表
20:50-21:00 次回開催日程
21:00-21:10 片付け・撤収
21:30くらい- 懇親会
係分担:
記録係:岩井/中継係:日高/懇親会係:嶋田/タイマー係:日向野
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Ustream
http://www.ustream.tv/recorded/19880765
■清田先生講義「レファレンス・サービスの「ネクスト」を考えるためのヒント」
スライド
http://www.slideshare.net/ykiyota/20-11173123
・ユーザの曖昧な情報要求をどうやって具体化していくか?
図書館におけるレファレンスサービスは、このテーマに重要な知見を与えてくれる。
しかしその価値が世の中で理解されていない。
・それを考えるうえでひとつの参考となる事例
「東京大学附属図書館におけるレファレンスサービス業務分析」
(2006年10月 日本図書館情報学会研究大会で発表)
・情報探索のポータル 昔は図書館→今はWebサーチエンジン
・サーチエンジンの難点:キーワード選択、結果からの取捨、信頼性玉石混交、古い情報
これら問題点に対して、図書館のレファレンスサービスが補完的役割を果たせるはず
・レファレンスサービスの難点:
・図書館のウェブサイト上でどこがポータルかよく分からない(cf.サーチエンジンのシンプルな検索ボックス)
・富山県のアンケート結果でレファレンスを使ったことがない人8割
・デジタルレファレンス:非同期型(メール・フォーム)/同期型(チャット)それぞれ一長一短。この両者の長所を併せ持つものができるか、という問い
・東京大学総合図書館カウンターにおける質問応答の分析結果
・口頭の質問 60%が利用案内、25%が所蔵調査
利用案内では図書館員が即答可能なものや同じたぐいのものが何度も繰り返し聞かれた
←Web等に情報は載ってはいるがバラバラで利用者に知られていない
・文書を介した質問 8割が所蔵調査、文献調査と事項調査が各1割弱
使うツールは、所蔵調査...OPAC・目録カード・Webcat、文献調査・事項調査...百科事典や人物レファレンス事典等、利用者自身が使えるものが大半
←既存のリソースが活用されていない(サービス間の連携が不足)
・ASKサービス(Webフォームからの質問) 8割が利用案内、所蔵調査8%、文献・事項4%ずつ
利用案内の大半が電子ジャーナルのトラブル(8割)
←利用者が自分の質問を文章化することの敷居が高く、ゆえに質問の種類が制約される
問題点1...図書館の提供している情報やリソースが、分かりやすく体系的に整備されていない
cf.パスファインダー ただし人手でコストが掛かるため網羅している範囲が狭い
問題点2...インタビュー機能をもつデジタルレファレンスが整備されていない
cf.京大レファレンスシステム(平田ら2000)、ダイアログナビ(清田ら2003)
・システムが満たすべき条件
・図書館利用に関する体系化された知識の保持
・聞き返しが容易なインタフェースの保持
→パスファインダーのオンデマンド生成
・必要なこと 情報探索や図書館利用に関するメタ知識の整備、図書館内外のオンラインリソース(OPAC、各種辞典、サーチエンジン、BSH、NDC、Wikipedia)の統合的利用
・この成果はリッテルナビゲーターやリサーチ・ナビに結実
・リサーチ・ナビについての評価の一例:情報爆発サーチシステム群の合同評価
100人に1時間ずつ、リサーチ・ナビも含めた7システムを使ってもらってユーザビリティ評価
・サマリーからヒントが得られたか? 肯定的意見86%
・どの情報源が最も有用だったか? 図書館の調べ方64%
・GoogleやYahoo!で得られない情報が得られたか? はい78%
・テーマグラフは有用だったか? はい84%
・その他 信頼できる情報にたどり着きやすい、意外な観点がたくさん見つかる、情報源別に分かれていて便利、GoogleやYahooのほうが早い
岩井:
・東大で現在レファレンスを担当している。内訳の割合は今もあまり変わっていない印象。現場がまだ進歩していない証のようで、忸怩たる思いがある。
・ただ全体的なボリュームは減っているように思う。実際にそうだとして、それが利用者が必要な情報を自力で見つけられているからなのか、諦めてしまっているからなのかは分からない。
田邊稔:
・FAQをいかに省力化するかを考えられないだろうか。
・開館時間みたいなものと高度なレファレンスとを、入り口で切り分ける。前者は図書館に問い合わせる前に疑問を解決させられればベター。
・ただウェブサイトに膨大なFAQを並べておくだけだと、それを見てくださいというのは辛い。
清田:FAQをパターン化しておき、来た質問を自動で分析して回答するシステムというのもありかもしれない。
外崎:複数の現場を業務委託していると、このような統計を取ろうとしたときに、それぞれで統計の基準があいまいで、報告の粒度がバラバラになってしまうということがあった。
清田:カテゴライズの徹底が必要だろう。
■今年の抱負
三石:
・ARGインターンとしてマイタン運営にも携わっている。
・去年はRefMasterチーム。今年も引き続き改善・向上をやっていきたい。
・アウトプットとしては、システムだけでなく論文の形にできれば。
・研究ではクラウドソーシング(Wikipedia、Yahoo!知恵袋等)にハマっている。これもマイタンで形にしていきたい。
嶋田:
・去年はブクリス。今年導入館をつくって実践にうつしていきたい。
・情報を人々にいかに的確に提供していけるかを考えたい。
前田:
・昨年はシー・ビブリオ。
・自分で考えてガンガン進めていきがちなので、今年はみんなでやっていく。
・なるべく手を動かさない。
南雲:
・去年はブクリス。誰もコードが書けなかった。今年もコードを書かずがんばりたい。
・本業は図書館システム。技術とエンドユーザをつなぐ仕事を。
日向野:
・メタデータをつなぐ研究をやっている。
・何かを作りたい。iPhoneやiPadのアプリを図書館とつなげられないかなど。
日高 :
・去年は俺CiNii。今年も開発合宿で何かやりたい。
・仕事でONIX for Booksをいじっている。今年バージョンが上がって、電子書籍のデータをどうするかという話題がホットになってくると思うので、その方面で何かやりたい。
・俺CiNiiの屍を超えていけ。
山崎:
・今年はRefMasterを実用にするため続けるのが最低限。
・Webにない情報も含めて精度と実用性の高い情報を提供できるかというのがテーマ。
田邊稔:
・昨年はシー・ビブリオ。
・OPACログの比較(東大・慶應)もやっていたが、扱いを慎重にしたいということで発展的解消。
・今年は人にフォーカスしたい。
資料を媒介にして人と人とをつなぐキュレーションサービス。
ソーシャルメディアや学内の履修情報など各種データを活用して、その人にマッチした情報・資料・人をレコメンドするイメージ。
それによって人材を流動させる。「これについてはこの人!」というナビゲート。
そのためのソーシャルメディアからのマイニング。
岩井:
・今年から参加。
・参考調査の現場で、人々が必要としてる情報にアクセスできているかどうかが気になっている。
・ニーズをいかにすくいとって、必要な情報を提供できるかを考えたい。
村木:
・今年から参加。
・仕事で図書館システムに関わっている。利用者行動・ユーザインタフェースに関心がある。
・利用者のことを考えた成果物が残せたら。
山田:
・昨年から明治大学米沢嘉博記念図書館に勤務。
・漫画の単行本や同人誌の国内有数の図書館。登録できたのはまだ半分、いまだに増え続けている。
・図書館畑のスタッフがこれまでいなかったので、図書館から見るとびっくりする運営。
・こうしたところ向けの図書館システムを考えている。本だけでなくアニメやゲームも管理でき、それらをエンターテインメント的に結びつけていくことができるもの。
外崎:
・昨年はRefMaster。今後の展開も面白い。
・学生でもあるので論文にまとめたいとも思っている。
・レファ協のデータの解析もやってみたい。キーワードから分類、情報源へのナビゲートみたいな新しい切り口ができないか。
・これまでの研究はリポジトリ、電子書籍など、どう効率化できるかに関心。
関戸:
・仕事でCiNiiを担当。Booksになって図書と雑誌も守備範囲になった。
・今興味があるのは電子書籍も含めた図書のデータ、特にあまり活用できてない件名のデータなど。
・ブクリスでもやった、検索に入るまでのハードルを下げるアプローチにも関心がある。
牧野:
・ブクリスの導入を目指す。ゆうきでは雑誌の特集記事を紹介するブログをやっており、それらを元データにすると面白いかも。
・最近興味を持っているのは、Webを活用した資料の収集。大分県立図書館「みんなの本ネット」のような、図書館が欲しい本とみんなが寄贈したい本とのマッチング。これを地理的には全国に、対象資料を雑誌の欠号にも広げたい
田辺浩:
・図書館システムの開発に従事。
・Apache Mahoutを勉強に触っている。
・手を動かして力になりたい。
清田:
・身軽になること。リッテルが1年忙しかったが、徐々に仕事をクロージングして、自分の本当にやりたいミッションに集中したい。
・アカデミックとリアルの谷を埋めることを今年も意識していきたい。
・マイタン活動のプレゼンスを高める。本を出版するとか世の中にとってのインパクトのあるもの。
■ディスカッション
三石:マイタンとしてどうプレゼンスを高めていくかは、みんなで考えていきたい。
日高:電子書籍のメタデータで今すでに悩んでいる人はどのくらいいるか?(1/3くらい挙手)
三石:田邊さんの「人に着目」に興味がある。単にシステムを作るのではなく、最終的に人にフォーカスというアプローチに共感する。
清田:先日情報爆発についてのシンポジウムで感じたこと。
・情報工学は最近学生に人気がない、研究費も減り気味、元気が無いように見える。
・なぜそうなのかを考えたとき、人がポイントになる。情報は人がいて初めて意味が生まれる。社会心理学の知見などが参考になる。
・成果の発信について。学者の世界では論文を書くことがアウトプットだが、それでは広がりが少ない。他の分野にどうやって打って出ていくかを考える。
例:天然資源の発掘に衛星データマイニングを活用するなど。
・図書館や出版の世界でも、その発想を。自分の世界にとどまっていてはシュリンクするだけ。
三石:ふだんの仕事のうえで、なぜここが上手くいかないのかといったフラストレーションを感じている人はいる? マイタンがそれに何か役立つことはある?
山田:さっきのレファレンスの統計が上手くいかないとかもそうじゃない?
外崎:
・図書館はもともといろんな立場のひとが集まっているが、3年くらいの周期で連続性が切れてしまう印象。
・自分は今までは検索結果からの連動に着目してきたが、使える人しか使いこなしていない。
・OPACのログの半分が自館内からであり、閉じられた世界になっている。
・電子書籍があれば、工学部の学生などはそもそも図書館に来ない。
・プレゼンスを高めないと、裏でがんばっていても図書館の評価に反映されないのでは。
清田:他分野との絡みという話では、山田さんも参加しているニコニコ学会のエネルギーはすごい。あれから何か得られるものはある?
山田:
・いちおうニコニコ学会についての説明。ニコニコ動画の世界で研究している人たちの集まり。私も発表者の一人として登壇した。
・世の中に面白い事やってるひとはたくさんいるんだなというのが実感でき、最先端の研究がふつうのひとにも見える世界にきたという意義がある。ここから学術研究がドライブされていけばいい。4月末に第2回が幕張メッセで開か
日高:ニコニコ研究者のコミュニティみたいなものも考えている?
山田:研究コミュニティとしてはまだそれほどでも。直接集まってやるのが面白いという感じ。第1回のアーカイブが見られる。「研究100連発」は面白い。
清田:
・ぜひみなさん次回までに見てほしい。このエネルギー、濃密なコミュニケーションというのは大きい。
・情報工学の中はかなり細分化されていて、分野間の接点はないが、こういう大きいプロジェクトに参加することで周辺分野との接点ができて創発が生まれることもある。
・図書館も、近いけどふだん接触がないコミュニティと関わっていくことが大切。
・そしてこの大きいコミュニティを維持していくことが大変だが、旗振り役は欠かせない。その点ではマネジメントの問題というのもある。ニコニコ学会もこれから組織運営がどうなっていくか。
山田:関わったばかりなので正直わからないが、面白い場所にしたい。続けていくことが大事。
三石:皆さんなりにマイタンをどう使っていくか、マイタンのプレゼンスをどう上げていくかといったことを考えて行きましょう。
■各チームからの報告
外崎(RefMaster):レファ協に参加している機関の機関誌でRefMasterの紹介がされた。Webにも載る予定とのこと。
嶋田(ブクリス):ゆうき図書館に加えて中津川からも内諾をもらった。
清田:去年の図書館情報展のシンポジウム後、『薬学図書館』誌にその内容を寄稿した。また去年はNDLのカレントアウェアネスで俺CiNiiが取り上げられて一瞬バズったりもした。こんな感じでチャンネルを増やしていきたい
■今後の予定
・予定どおり2・3月はクールダウンの時期とし、4月からチームでの活動を。
・次回の開催日は2/17。メインはCode4Lib(2/6-9)の参加報告をぜひ田辺さんに。その他あればFacebookへ。
・3月はひとまず仮で3/9を予定。
・せっかくクールダウンの期間なので、しばらく参加できていなかった方にもまた来てほしい。
清田:
・もうすぐ2年になる。マイタンをどう盛り上げていくかについて、4月から本格的に動き出すにあたって皆さんにも考えてほしい。
・私自身も本業はネクストだが図書館に関わることに意味があると考えている。
・情報を集めるという事に特化した図書館の特徴を、他の分野にどう生かせるか、いろいろ考えてみてほしい。